医療行為の知的財産権

 2003年7月に知的財産戦略本部内に「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」が設置されて、医療関連行為に対する我が国の特許保護は充分か否かの検討が進められ、その検討結果が報告された。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/iryou/torimatome.pdf

 要約すれば、薬と医療機器には特許保護がされるが、たとえば手術法などについてはダメ〜ということ。

一つの裁判例があります(東京高裁平成14年4月11日:平成12年(行ケ)第65号)。
 ここには,医療現場における医師による医療行為の自由の確保が論じられています。つまり,医薬や医療機器が特許の対象となっていた場合,医師がそれを使用できないことはあっても,使用できる範囲の医薬や医療機器を準備して現に医療行為に当たろうとする時点においては,これから行う医療行為が特許の対象となっているか否かを懸念することなく,その意味では何等の制約なく,医師は自らの力を発揮することができます。それに対し,医療行為そのものにも特許性が認められる場合は,医師は常に,これから行おうとする医療行為が特許権侵害であって責任を追及されるのではないかとの恐れを抱きながら治療行為に当たらなければならないことになりかねません。したがって,医療行為に当たる医師をこのような状況に追い込む制度は,著しく不当であり,我が国の特許制度はこのような結果を是認するものではないと判示されています。
http://chizainavi.jp/miyoshi_column/20050223.html

 これに対して、科学ジャーナリストの馬場錬成氏が2002年に書いた、次のような意見もある。

 医療行為の多くは、標準化された科学技術であり、産業技術になってきた。当然、特許の対象にもなってきたのだが、日本ではそのような時代認識を持とうとしない。昔の医療行為をもとにして作られた審査基準が、依然として守られているのである。

 今年4月、ドイツの「サージカル・ナビゲーション・テクノロジーズ・インコーポレーテッド」が特許として認めるように東京高裁に提訴していた、「外科手術を再生可能に光学的に表示するための方法と装置」の発明に対し、高裁は「この発明は医療行為に該当するので、産業上利用できる発明ではない」として訴えを棄却した。

 この発明は、外科手術やその練習に使う治療部位の表示方法で、人体の断層写真をデータ処理して記憶させ、三次元立体画像に表示したうえで、メスなどと断層写真を重ね合わせて表示することができるものだ。手術だけでなくシミュレーションとして手術の練習もできる装置である。

 この発明はアメリカとヨーロッパで特許として認められていたが、日本だけが拒絶した。こうして日本は、技術の進歩、産業の振興に立ち遅れることになり、患者が本来受けることができる先端技術から取り残されていくのである。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_baba05

 特許庁は、医療費、保健制度などを含め、日本の患者が最先端の医療を受けることを第一目標として、医療技術の進歩のために特許制度をどう使うかを考えてほしい。医者の治療に支障を生じない方法はどうすればよいか、患者の費用負担の仕方(研究開発費、保健制度の関係)などを総合的に検討し、早急に医療特許を認めるべきだ。
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_baba06

 それでぇ、わたし的にはこれをどう考えるかというところまでは、まだ調べがついてなくてわからない。ちょうど雑誌「Invitation」で今度、知財立国を特集するようなので、このへんのことについて担当させていただきながら、考えてみようと思う。ってか、編集のH女史は、4月半ばが締め切りとか言ってたぞ。間に合うのか〜〜〜!