漢方薬
日経Med Waveより。
・・・代表的な薬が、「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」だ。しっかりした体格で体力は中程度かそれ以上、不安、不眠、イライラ感などがあり、胸の両脇部がすっきりせず、その部分が張って苦痛を感じる人に対して使用される。
柴胡加竜骨牡蠣湯には、鎮静作用がある竜骨、牡蠣に加えて、抗ストレス作用があるとされる柴胡が含まれている。男性の“心の病気”の第1選択薬と位置づける専門家もいるほどだ。
このほか、「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」、「柴朴湯(さいぼくとう)」、「女神散(にょしんさん)」、「抑肝散(よくかんさん)」、「加味帰脾湯(かみきひとう)」、「加味逍遥散(かみしょうようさん)」などがよく使われる漢方薬といえる。
このうち、黄連解毒湯は、顔色が赤く、気が高ぶっていて不安や焦燥感があり、動悸があるなど、心悸亢進気味の人に使う。柴朴湯は、体力は中等度で、気分がふさぎがちで、のど、食道部分に異物感があり、ときに動悸やめまい、吐き気などを伴う人に用いられる。
女神散は、古くは「安栄湯(あんえいとう)」と呼ばれ、戦場で武士の刀傷や神経症に使われた。気の循環を良くしてうっ血を散らし、血熱を冷ます働きがあるとされ、生理不順や月経障害などの女性疾患への効果から、女神散と呼ばれるようになった。精神安定作用もあるといわれており、体力が中等度で、のぼせやめまいを訴える人に使われる。
抑肝散は、もともと小児のてんかんなどに用いられてきたが、体力が中等度で、興奮しやすく怒りっぽい成人にも用いられる。肝の気が高まると怒りっぽくなるといわれ、それを抑えるところから、この名前がついたといわれている。
加味帰脾湯は、脾臓や胃が虚弱で、そこに精神的疲労が加わって心身ともに疲労の極みに達し、不安、不眠などを訴える人に使われる。加味逍遥散も基本的に体力のない「虚証」の人が対象で、のぼせ、動悸、不眠、不安感、疲れやすさなどを訴える場合に用いる。女性の神経症状に対して使われる場合が多い。・・・
(天野 宏=医療ジャーナリスト)