『14歳の子を持つ親たちへ』

 いやまあ、佐々木恭子たんが結婚したからといって、そう驚くこともないのかもしれないが、個人的には、東大卒の負け犬が毎朝テレビで葛藤とおフランス教養を秘めつつにこやかに笑う様子を確認しては、ほっと胸をなでおろしていた少数派秘めたるバリキャリ志向の負け犬もいたに違いないと思うので、もはや死語となっているバリキャリを隠し続けなければならない彼女らへのアッパー一発、と思えば面白いのであります。
 私語はよろしい。

 ところでこの本は、私にしては珍しく出てすぐ買いました。ウチにも中3の娘がいるので。読めばタメになるだろうなんて期待はたいしてしてませんでしたが、案の定、もうすでにわかっていること、知っていることが、内田樹センセと名越康文センセの話法で語られていました。ただそれだけだと言ってしまえば、それだけなんですが、私はこの「話法」、言い換えれば「語り口」こそが大事なのではないかと思うわけです。
 世に子育て本の類はいくらでもあるけれども、実際役に立つものはほとんどないのはなぜかと言えば、書かれてある言葉が読み手にとって「腑に落ちない」からだと思います。理屈的に正しいことが書かれてあっても、正しいということは頭で理解できるけれども、なるほど自分もそうしてみよう、そうしてみればきっと何かが変わるに違いないと確信を持つまでには至らない。それが腑に落ちないということの中身です。「腑に落ちる」を内田、名越両名の言葉で言うと「身体化」。身体(脳みそも身体だ)をとおして理解したことを、身体をとおして具現化するという、このプロセスを経験したことのない人間がいまや14歳の子どもたちの親にたくさんいるのではないか、というのが、彼らの推測です。
 周りを見渡してみて、その推測は確かに当たっていると私は思います。で、自分はどうなの?と振り返ってみるに、ここんとこちょっとばかし身体感覚が鈍りつつある。これはまずいなぁ、、、と思って、今朝は久しぶりにストレッチを入念にやりました。
 今朝のストレッチで、子どもが真っ直ぐすくすく育つわけじゃーありません。すくすく真っ直ぐ育てたいと思ってるわけでもない。一人の人間のもつ豊かさ、深さとは、真っ直ぐ育っただけでは見つからないものであると私は思うのです。これは私の直感を言葉にすると(内田センセのようにうまいこと理屈は語れない)、親の身体をとおして子どもに伝わったものが、子どもが子ども自身で育ってゆく力になる、ということではないか、と。重ね重ねただの直感ですが、身体が硬くなると、脳みそも硬直化し、柔軟で自由な発想ができなくなる。気のめぐりが悪い、ってんですかね。軟体動物みたいに柔軟体操なら得意、不得意、って話とは違うんですよ。動きの滑らかさというか、伸び伸び感というか、そんな感じ。すなわち直感の三段論法によれば、親の気のめぐりの悪さは身体の硬さと相関関係にあり、親の気のめぐりが悪いと子どもも硬直化し、子どもの人生の豊かさと深さの可能性を減じてしまう。だからとりいそぎ私はストレッチ。
 この本を読んで、上記のように、すでにわかっていたことをもう一度、自分の頭で確認したり、姑息的に身体を立て直そうとしたりしたわけですが、これ、ぜんぜん書評にもなんにもなってませんが、ま、そんな風な本です。方向としては間違ってない、たぶん、、、と思います。

14歳の子を持つ親たちへ
内田 樹 名越 康文
新潮社 (2005/04/15)
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おすすめ度の平均: 4
4 中3の子を持つ親への 「non how-to本」
4 マニュアル本ではありません

ISBN:4106101122