がんになっても、あわてない(平方眞)

 「健全な死生観」などというものがあるのかどうか、わからないが、諏訪中央病院の緩和ケア病棟で医長を務めるこの医師は、とてもバランスのとれた、健全な考え方をする。
 特に「第1章“命”とがんの関係について考える」を興味深く読んだ。著者は、「命の残りの時間」という表現をあえて多用している。正直、これを読んでいてわたしはかなり焦った。かなり無駄に生きてしまっているような気がした。けど、まあ、これでもいいんじゃないかとも思うのだ。時々焦ったり、時々開き直ったりしながら、いつか死ぬんだ。それでいいや、って思う。残り時間がわかんなきゃ、逆算もできない、ってことは、今、自分がどう生きているかが、ちゃんとわかっているなら、それでいい、と、わたしは自分を許すことにした。焦ってるとか、開き直ってるとか、平常心ではいられない自分を自分でわかってればいい。
 みたいなことを、考えさせてくれる本で、2章から後はがんについての話がとても平易に書かれてあって、がん入門書としては最適だと思う。がんを告知された人はもちろんだが、将来がんを告知されるかもしれない人(と言えば、全員だ)も、一度読んでみるのは悪くないんじゃないかな。
 意外と今までこういう本はなかったような気がする。売れるといいな、と思った。
 

 

ISBN:4022500727