017:凶暴両親

凶暴両親 (ソフトバンク新書 (075))
成松 哲
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 178205
おすすめ度の平均: 4.0
4 良書、だとは思うが……
4 モンスターペアレントが本当に存在します。
ISBN:4797345896

 amazonのユーザーコメントが好意的なことにびっくりしてしまう。なぜこれが「良書」? そりゃさ、まぁこれ1冊でも状況はわかるわけよ。ウチにも子どもはいるから、具体例だって今までけっこう見てきてるし、知ってるわけだから、まぁ嘘が書いてあるわけじゃないということはわかる。
 わたしはこの本、ひどいデキだと思うんだけど、それはなぜかというと、どうやら取材は2〜3件しかしていないのか、どうにも最後の落としどころがたった何人かの人が言ったことに簡単に流されていて非常に考えが甘いからなのだ。だいたいここへもってくるまでにも、親側のコメントは同級生で子どもがいる友だちんとこに電話してちゃちゃっと話を聴いて済ましちゃったのか、いまいち具体性に欠けている。不足の紙数は大宅文庫の雑誌検索とかで集めた記事を切り貼りして埋めちゃったという感じで、その切り貼りも、モンスターペアレントの例としてこれが果たして適切なのかと思うような事件を、おそらくただ世間をずいぶん賑わした事件で読者もみんな知ってるだろう的な安易なチョイスで書いちゃってる。しかも、一つひとつの事件について著者はたぶん、実際、現地で取材や調査をしたなどということはなく、その辺に散らばってたコピーを読んであらすじを書いて、モンスターペアレントにこじつけたみたいな風なのだ。わたしも同業者ですからだいたいのことはバレますよ、っていちおうここにさらしておこう。
 締め切りを切られて急いで書かなくちゃならなかったんだろうが、それでこんな風なデキになってしまうのだとしたら、君には無理なテーマだったということじゃないかなと、ちょっとエラそうだがそんな風に思ってしまいますよ。しかし著者のあとがきには、失笑を禁じえなかった。まぁあんまり人のことは言えないのだが、取材して書くのがとても好きで、書いたものに対して読者から反応があったりするとほんとにうれしいと、まぁ、なんだか能天気なのだ。わたしだったら、いくら急いで書けと言われたからといっても、こんなものを出してしまった・・・と思って後から思いっきり一人で凹みますがね。そんなにも素直な著者が、何かの拍子にこんなブログを見つけてしまったら、凹むんだろうな。でもわたしはこのままアップする(笑)。
 モンスターペアレント問題について知りたい、考えたいというときには、この本は完全スルーでいいと思いますね。これから紹介する新書2冊のほうが遥かに役に立ちます。具体例はどの本を読んでも同じようなケースが挙がっており、これを読まないとわからないことなんて、なんにもありません。