021:精神看護という営み――専門性を超えて見えてくること、見えなくなること

ISBN:4826504829

 臨床、教職を行ったり来たりしながらの著者の足跡がほぼ時系列に並んだ本。看護研究を進め、深めていくうえでの問題意識の持ち方というか、モチベーションの維持の仕方というか、そんな風にも読めるし、看護というジャンルでキャリアを積み上げていく一つのモデルケースとしても読めるし、それはそれでたぶん、精神科の看護師に限らず、とても参考になるだろうと思うが、そんな風に功利的に読んでしまうのはもったいなぁと思える本だった。
 わたしはこの著者の疑問の感じ方がとても好き。問題へのアプローチの方法も好き。
 くくってみるならエスノグラフィーということになるのだろうが、つい最近読んだばかりの『看護のエスノグラフィー』(医学書院)の著者とはずいぶんとスタンスが違うものだなぁと思う。わたしはね、『精神看護という営み』の阿保さんのような、緩い自意識とでも言うのでしょうか、柔軟なありように救いを感じます。
 後ろのほうの章で、精神科のクリティカルパス批判をしていて、ここはわたしも常日頃感じていたことでもあったので、胸のすく思いがしましたね。快哉