032:患者さんと介護家族のための心地よい排泄ケア

患者さんと介護家族のための心地よい排泄ケア
西村 かおる
岩波書店
売り上げランキング: 18037
ISBN:4000052039
 
 昨今では、けっこう本格的な排泄ケアが必要な患者でも、介護する家族がいるなら退院させられる。介護にあたる家族といっても、一昔と違って、子育てを終えた主婦ばかりではない。子育てを経験したことのある人なら割合、排泄ケアも要領を飲み込むのが早いかもしれないが、これまでな〜んにもやったことのない、たとえば独身で老親と同居していた息子、とかが介護にあたらざるをえかったりするのである。排泄ケアに限らず、その不安たるや、想像に難くない。
 だから、退院指導は大切です。隙間時間にささっと終わらせるなんてものではダメです。
 そういう認識はちゃんともっている施設だと、それぞれの患者さんに必要なケアのためのマニュアルを自前で作成したりして、退院指導時に渡したりするわけです。しかしです、いちいちそんなものをつくるのも大変だろうし、いったいそういうものをつくることがナースの仕事なのか?とも思うわけです。あり物を買って読んでもらればいいじゃんか。ところがです、普通の人が抵抗なく読めるそういう本って見渡してもあまりないのだな、これが。
 まずもって、医療書専門の版元がつくる本は、家族向けとか言いながら装丁からしてダメっすよ。横書きだったりな。突然、やたら詳しい薬の表が載ってたりな。本当に介護家族向けにつくる気あったのか?といいたくなるようなシロモノばかりです。

 しかしこの本は、よく考えて作ってありました。排泄の仕組みから、医療の知識のない人でもわかるように、丁寧に書かれています。必要に応じて、たとえば手技を表す具体的な図が載っています。本当になんにも知らない人が読んだときに、必要なことがきちっとわかるか。そういう視点で一貫してつくられていました。感心しました。
 退院指導時に希望する家族にはその場で買ってもらえるように、ストックしておくとよいかと思います。参考文献リストなんて渡したって、本当に読む家族はそんなにいないでしょうから。退院したらその日から困るんですよ、って言って、買ってもらう。お金を払って買えば、さすがに読みますぜ。押し売りじゃなくて、患者の安寧のためです。