081:聖の青春

聖(さとし)の青春 (講談社文庫)
聖(さとし)の青春 (講談社文庫)大崎 善生

講談社 2002-05
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 うちには子どもが3人いて、そのうち末っ子で小学6年生になるコータが最近、友だちの影響で将棋を始めました。前から名人戦などの中継や大盤解説は時々テレビで見てましたが、駒の動かし方を知っているだけで将棋のことはほとんどわかりません。わかりませんが、将棋ってのはおもしろい。スポーツの真剣勝負を見るのと同じような高揚感があります。
 でもって、今期の竜王戦は最終局、テレビの中継が途中で終わってしまってなんとか最後を見届けたいものだとコータと二人、将棋連盟のサイトからたどっていってブログに10手ごとに更新される棋譜を見ていました。逆転逆転の手に汗握る熱戦を制したのは渡辺明竜王
 これがおもしろかったのですよ、とmixiに書いたら、これもおもしろいよと教えてくれる友人がいて、読み始めてみたら止まりませんの。大崎善生。友だちが教えてくれたのは、この後に紹介する『将棋の子』だったんですが、調べてみたら作品としてはこっちのほうが先に書かれたということだったのでこっちから読みました。
 羽生名人と同じ世代で、奨励会、プロとしのぎを削ってきた村山聖【むらやま・さとし】の物語。幼い頃にネフローゼを患った村山が、その将棋の強さを怪童と恐れられつつ病魔と闘い、悲願の名人に手が届かないまま生涯を閉じた、その記録というか、ノンフィクション。将棋がわかればきっともっとおもしろいに違いないのだが、以前にまだ麻雀をほとんど知らない頃に初めて読んだ『麻雀放浪記』のようなおもしろさがあった。人間にフォーカスしているのがいい。こういう作品は、ただただページに埋没して一気に読めるのがうれしいです。特にこの年の暮れ、ざわざわしている時期には一粒のホールズのような清涼感がありました。