065:あと千回の晩飯

あと千回の晩飯 (朝日文庫)
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朝日新聞社 2000-05
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 山田風太郎、晩年の随筆。この本のことは奥川幸子さんの『身体知と言語』のなかに出てきて知った。約1年経って、やっと読んだわけだ。相変わらずやることがのろい。
 まあのろくてもそれなりでいいんだな、と自分を許せるようになるためにはこういう本を読んでおくといい。うまいこと年をとりたいなら、諦めたり、自分を笑ったりする姿勢が必要で、山田風太郎はそれを切なそうに、おもしろそうにやっているんだ。そこがおすすめ。
 そういう老人であるから、同じ話が何度出てきてもまあ愛嬌だ。これで原稿料もらってたのねー、などと妬んでいるようでは大老人にはなれんぞ、自分。
 もとは新聞・雑誌の連載であった。「いろいろな徴候から、晩飯を食うのもあと千回くらいなものだろうと思う」という書き出しは、初出が1994年。それから2年後の随筆まで収録。亡くなったのは、2001年であった。自分の予想より数年長生きされた。この随筆のなかにも出てくる、野生の象のようなわけにはいかなかった。だからなに? それでいいんじゃないかと思うのである。