066:逝かない身体
〈ケアをひらく〉逝かない身体ALS的日常を生きる | |
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高校同期の友人id:ajisunの初単著。感動的なできばえでした。以下、amazonにアップしたユーザーコメントをコピペ。
ほかの方も書いていらっしゃるように、“闘病記”と呼んでしまうことには躊躇を覚えます。単なる“介護記録”でもありません。著者は、ALSという難病を生きる母を見つめ、その母を介護する自分を見つめつつ、家族介護の閉じた関係性にこもってはいませんでした。またこの本は、「ALSという特殊な病気のお話」でもありません。人間なら誰でも病気にかかるという点で、誰にでも通じるテーマだと思います。
学問で言うなら、社会学、倫理学、看護学、政治学……いろんな分野へのヒントが詰まっていました。この物語が、いわゆる論文ではなく、文学として提示されたのは、必然であったと考えます。病いをめぐる人間の営みをくまなく記述し伝えたいと思えば、ものさし一つではとうてい足りないからです。
たとえば、母上の病気が進行し眼球の動きもとまってまったくコミュニケーションがとれない状態になったときに著者はこう書いています。
「想像には限界があった。だから母のために私に何かができるのだとしたら、それはありのままの母を認めて危害を及ぼすようなことは一切しないことだ。」(p.199)
人工呼吸器を止めれば母は楽になれるのではないか、という考えを反芻した末に、著者がたどりついた結論でした。「家族の代理意思決定」だの「慈悲殺の是非」だのといった聞き覚えのある言葉では語り得ないことだと感じました。言語的なコミュニケーションがとれなくなってからも、母上がその身体でさまざまなことを伝えてきた様子もつぶさに書かれていました。身体からなにを読み取りどう応えるかは、ひとえにケアにあたる側の感受性にかかっています。押さえた筆致からは、著者が意図するのは読み手を感動させることではなくて、人間の生がはらむ可能性を見逃さないでほしい、大切にしてほしい、という気持ちなのだとわかるのですが、やはり体験から紡ぎ出された言葉には、人の心を動かすしずかな迫力があります。
これからわたしは折々にこの本を読み返すことになると思います。そして、読むたびに新しい発見をしていくことになるだろうと思います。
読んですぐにでも感想をアップしたいと思っていたのだけど、絶対この本いいんです、読んでください!という気持ちが強いほど、手がすくんでしまって書けないものでこんなに遅くなってしまいました。1か月も寝かせておいて、その分だけいいレビューが書けるとかというと、そういうわけでもない。これより遅くなっても状況は変わらない。だったら、不完全でもとにかくアップしたほうがいいよ、と思ってえいやとアップしました。なんのことはない、今日こそ書くぞと決めたら20分でできちゃったんだ。
こんなレビューではぜんぜん伝わりません。読んでやってください。よろしくお願いします。