エビデンスとは何か?

 新しい創傷治療というサイトを昨日、今日と探索。夏井睦さんが執筆された本の紹介をするため。
 いわゆる「ラップ療法」に対してはEBMの観点から批判する言説が多く、医療の現場にはまだほとんど導入されていない。Dr.たちの多くは、はっきり言って、この治療法(=湿潤療法)を無視している(どころか、せせら笑ったりもしている)。だが、日々患者に寄り添って手術創のガーゼ交換などに携わるNs.たちのなかには強い関心を持っている人も少なくない。Ns.にとっては、EBMなんかより、患者さんの創の治りが早くきれいであることのほうがずっと価値のあることだから。
 で、その本というのが、三輪書店から出た『創傷治療の常識非常識2 熱傷と創感染』(後ろのリンク参照)という、まるで普通の体裁の、医療手技のハウツー本のように見える本なのだが、これが、読んでみると、なかなかに凄みを感じさせてくれる本なのである。雑誌の紹介欄にたった68文字しか書けないことが恨めしい。
 つまり、エビデンスとは何か?ということを、著者は真剣に問い、その答えとして対論を示したのがこの本とも言えるわけで、これはNs.にはきっとウケルに違いない。とわたしは思うのだが、編集部としては医学的エビデンスがないとされている療法を推進する人の本だから、400字のコメントが許されるメインフレームでは扱えないということだった。それで、68文字のフレームに落ちちゃったわけだ。
 そんな感じで、当の版元ももしかするとあまり自信がないのか、この本については新刊紹介欄に載せてほしいと強く働きかけてはこなかった。だが、わたし、読んでしまったので、これは載せないわけにはいかないと思った。
 EBM批判だのなんだのっていう以前に、この本は、問題の捉え方、解決の仕方、ひいては問題に直面した人の生き方の問題ともとれる。たったの火傷(などと言っては、患者さんには悪いが。それに火傷は侮れない創であることは十分に心得てはいるけれど)問題を、こんな風に、自分の生き方に則して考えてゆけるこの夏井睦という人は、なんかとてつもなく凄い人なんじゃないかと思ったりする。ご本人にはそんな自覚は毛頭ないんだろうけれど。

 やっぱりわたしは、医療のなかでもNs.のための媒体をやってきたこともあって、どうしてもDr.に厳しく、Ns.に甘い部分が・・・

ISBN:4895902412