053:エンハンスメント論争

ISBN:4784506152
 
 医療、薬、電子工学などなどの技術を使って、身体能力を拡張することをエンハンスメントと呼ぶ。さて、これがどこまで許されるのか、というのが今日の、生命倫理学における重要命題となっている。で、この本は、前半がイギリスのNPO法人が出した論文集の翻訳、後半が日本の識者による論文集という構成で、何がいい、どれは悪いという結論を出す性質のものではなくて、全体の状況、論点がだいたいつかめるような内容になっている。こういう本があってもいいのではないかとは思う。ただ、なぜこの人がこれを書いているのか、なぜこの論文を収載したのか、というあたりがどうもあいまいで、いまひとつ全体の流れの中での必然性が感じられないものもあったように思うので、編者の考えみたいなものをもっと前面に出してもよかったのではないかとも思う。ちょっと煮え切らない。総花的にやるなら、もっと編者を殺して、明らかに総花とわかるようなラインナップでやる手法もあったのではないかと思える。