043:終の住処

終の住処
終の住処
新潮社 2009-07-24
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鷺と雪 世紀の発見 眼と太陽 肝心の子供 贅沢の条件 (岩波新書)

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 芥川賞受賞作である。作家のテーマは“時間”である、らしい。また、彼が好きな作家の一人がガルシア・マルケス、らしい。
 そう説明されて読めば、なるほど、この作家が表現しようとしている作品世界がよく見えてくる。一読のときにはなかなか慣れることのできなかった独特の手触りが、むしろ好ましいものに感じられてくる。次回作も読んでみようという気持ちにさせられる。
 だけども、すでに設定からして不思議なものではあるので、主人公の独白部分にことさらに、例えば年中満月から欠けることのない月などを描写してみる必然性はなかったかもしれない、と思ったりもする。少年のような、妄想のような、そういう描写があるたびに、あ〜も〜男ってやつは!と思ってしまったのはたぶん、わたしだけではないだろう。妙に幼く感じられてしまうのである。こういう幼い男は面倒臭いからイヤだなぁ、なんて不遜にも思ってしまうのである。すまないことだが、読者はどこまでも勝手だ。
 でも売れてるらしい。40代、50代のサラリーマンの男たちが読んでいるらしい。男が読むとこの小説はどのように読めるのだろうか。聞いてみたい気もし、夫に勧めてみたが「あー興味ないから」とあっさり断られた。そういえばウチの夫は純文学みたいなものをまず読まない。まあそうだよね。純文学しか読まない男とか、哲学・思想書しか読まない男とかは七面倒でやってられない、とある時つくづく思って無理やりにつかまえたのが今の夫なのだからそういうものなんだろう。どっちもどっちだ、と今では思う。話がそれた。